大動脈の手術後には脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、脊髄麻痺、腎不全といった様々な合併症を起こす可能性

大動脈の手術を受けられた方へ(術後の注意点)
大動脈の手術後には脳梗塞心筋梗塞不整脈、脊髄麻痺、腎不全といった様々な合併症を起こす可能性があります。合併症が起こったときには、その治療が優先されます。
一方、多くの患者さんは、合併症なく手術を乗り切れるので、できるだけ早くに元の生活に戻るようにリハビリテーションを行うことが重要です。自宅に退院しても、医療施設に転院しても、体を動かし、身の回りのことは自分でするように心がけることが大切です。
手術の創の治りや痛みには個人差があります。創部が化膿すると赤く腫れる、熱がある、痛む、汁が出てくるといった症状があります。すぐに医師に相談してください。
痛みは時間とともに和らぎ、半年~1年ほどでほぼなくなります。気候の変わり目や気温の変化によって痛むことがありますが、ほとんどの場合心配ありません。
胸骨を切断して手術をした場合は、胸骨ワイヤーで肯定しています。半年ほどで胸骨はくっつきますが、それまでに強い負担をかけると、骨がずれたり、ワイヤーが切れたりすることがあります。術後半年くらいは前胸部を強くねじるような運動(ゴルフなど)は避けて下さい。また、3カ月程度は自動車の運転も避けた方が良いでしょう。
人工血管を体内に入れる手術がほとんどですが、人工血管感染はごくまれにしか起こらないものの注意が必要です。高い熱(38度以上)が続く場合には要注意ですので、「風邪をこじらせた」などと自分で判断せずに医師に相談してください。人工血管感染の原因の主なものとして歯槽膿漏、抜歯、生肉などの汚染された食物摂取による腸炎などが挙げられます。歯科治療を受ける時には歯科医師に大動脈の手術を受けていることを伝えてください。
人工血管が体内に入っている他、他の大動脈の変化を観察する必要もあるので、定期的に専門医を受診してください。

11. 最後に
動脈瘤はいったん破裂すると即座に命に係わる状態になります。急性大動脈解離も含めた緊急事態に陥った方が、国立循環器病研究センターにたどり着いた時には、全力で治療することができますが、救命のための緊急手術が間に合わないことや、病院にたどり着くことができないこと(院外心肺停止)もあります。
急性大動脈解離の発症を予測することはできませんが、破裂の可能性がある大きさの大動脈瘤が見つかれば、破裂する前に治療を受けるのが最も大切なことです。
緊急手術で行われることは、予定して行われる手術と同じ術式です。十分に検査して落ち着いた状態で受けていただく場合の成功率が高くなるのは当然です。
症状がない時に「手術を受ける」と決断するのは、大変困難で勇気がいることですが、手遅れにならないうちに専門医の説明をよく聞いて、それぞれの患者さんに最も適した治療を受けられるようお勧めします。