今日は、造影剤を使ってのCT検査あり!

造影剤とは
造影剤とは、画像診断検査をより分かりやすくするために用いる薬剤全体を意味します。

主にCT検査、MRI検査などで用いられる造影剤は静脈に注射し、血管造影検査(ANGIO)ではカテーテルを用いて直接血管内に注入します。

また、胃や大腸のバリウム検査など消化管や胆道系の造影検査のように、経口的、経内視鏡的、経肛門的など、
目的とする臓器に対して直接用いられることもあります。

10%程度の術後患者さんが再治療

A型大動脈解離で手術をして九死に一生を得ました。解離はお腹の血管まであり上行大動脈だけ人工血管で置換したとのことですが、今後再発することはありますか?

A型解離では破裂する危険性、心筋梗塞脳梗塞の危険性が最も高い心臓直上の上行大動脈(あるいは弓部大動脈)を人工血管で置換します。解離が上行大動脈に限局している場合は手術で完治しますが、解離がお腹の血管まで及んでいる場合は術後に解離が残存します。将来その解離した動脈が拡大して破裂する危険性や血流が低下する危険性が少なからずあります。若い患者さん、高血圧の患者さんに再発する危険性が高いです。当院では10%程度の術後患者さんが再治療をしています。術後半年あるいは1年に1回はCTで定期検査をすることをお勧めします。

 

血圧をコントロールするために

) アルコールの制限
アルコールと高血圧の関係もよく知られています。高血圧の人は飲酒を制限するのが望ましく、その目安は男性で1日30ml(日本酒1合、ビール大瓶1本に相当)以内、女性はその半分までです<図4>。

しかし、アルコールとその代謝産物には血管拡張による降圧作用もあります。私たちの研究では、飲酒制限により日中の血圧は下がりましたが、夜の血圧は逆に上昇し、24時間血圧は不変でした。アルコールは脳出血不整脈、心肥大などの危険因子ですが、一方では動脈硬化を抑制し、虚血性心臓病を予防する働きがあります。

アルコール摂取量と循環器病死亡および全死亡との関係はU字型で、飲まない人より少し飲む人の方が死亡は少なく、酒量が多くなれば危険性は高くなります。したがって、特別な理由がなければ禁酒する必要はありません。

下行大動脈が裂けるスタンフォードB型の治療は、1年以内にしたほうがいいの?

 


1.大動脈解離とは
心臓が絞り出した血液を全身に送り届けるパイプが動脈ですが、この動脈の中で最も太い部分を大動脈と呼びます。
この大動脈は高い血圧(血液の圧力)に耐えるため3層構造となっており、大変頑丈にできています(図1)。
しかし諸々の理由で、この3層構造のうち、中膜(まん中の膜)と内膜(一番内側の膜)が弱くなり、大動脈の内部を流れていた血液が内膜にできた裂け目(エントリー)を通り、中膜層(内膜と外膜の間)に入り込むことがあります。
中膜層に入り込んだ血流は勢いが大変強いため、大動脈の壁を縦方向(末梢方向=足側)に裂いて行きます(図1)。

これを医学用語で大動脈解離(ダイドウミャクカイリ)と呼びます。
多くは胸部の大動脈に裂け目が始まり、腹部大動脈まで拡がります。骨盤レベルに達することもしばしばあります。
このように解離した大動脈は片側が外膜1層のみとなっているため、血圧に耐えられず、途端に破れてしまう(大動脈破裂)ことがしばしばあります。
また、大動脈解離の裂け方によっては真腔(もともと流れていた腔)が偽腔(裂けてできた腔)に押されて血流が悪くなり、内臓や全身への血行障害を来たし、死亡することもあります。

 

2.大動脈解離の治療法
2-1.A型とB型で治療方針が違う
大動脈解離は大動脈が裂ける場所によって2つに分類されます。上行大動脈(心臓を出てすぐの大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードA型(図2a)、上行大動脈は裂けず、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードB型です(図2b)。

 

A型は病気が発症して48時間以内に破裂を起こしやすく、緊急手術が必要です(破れやすい上行大動脈を人工血管に取り換えます=かなりの大手術です)。

B型はA型に比し、すぐには破裂しないことが多いため、お薬と絶対安静の治療が中心です。しかしこのB型も破裂の兆候が認められたり(背中の痛みが持続)、腹部内臓や下半身への血の流れが悪くなる場合は緊急の治療(昔は手術、最近はカテーテル治療)を必要とします。

またB型は病気発症すぐには手術治療の必要がなくても、数ヶ月~数年で偽腔が拡大して破裂を来たすことがあります。このため偽腔が膨らみ瘤化(大動脈解離の偽腔が膨らんで瘤化した状態を解離性大動脈瘤と呼びます)するのを防ぐため、解離の原因となった裂け目(エントリー)をカテーテルで塞ぐ治療をすることがあります。これが、B型大動脈解離に対するステントグラフト治療です(図3)。


2-2.発症してから最初の1年が大事
A型大動脈解離の多くはその発症時に緊急手術が施されます。この病気発症時の緊急手術は、心臓に近い上行大動脈を人工血管に取り換えるものですが、この術後には背中の大動脈(下行大動脈)に大動脈解離が残存してしまいます。
つまりA型の手術の後にはB型の大動脈解離が残るわけです。
一方でB型は病気発症時すぐには緊急の治療が必要なくても、上述のように裂けて出来た偽腔がどんどんと拡大し瘤化することがあります(全体の30-40%)。このような拡大・瘤化の兆候があるB型大動脈解離にはステントグラフトによる先制攻撃が必要となってきます。

但し、このステントグラフトによる先制攻撃は、病気が発症してから1年以内に行ったのと、1年以上経過して偽腔が膨らんでから(解離性大動脈瘤になってから)治療を行ったのとでは、その効果に大きな違いがあります。
つまり、病気が発症してから1年以内に治療を施行すれば、偽腔が高頻度で縮小し、大動脈解離が根本的に治ってしまうこともあります。
反対に、1年以上経過して大動脈解離の偽腔が瘤化してしまった患者さんにステントグラフトによるエントリー閉鎖を行っても、偽腔の縮小が得られにくく、治療の効果が得られにくいことが多いのです。それ故、B型大動脈解離に対するステントグラフトによる先制攻撃は、発症してから1年以内の治療が重要となってきます。むやみに「治療が怖い」などといった単純な理由から、漫然と大動脈解離を放置するのは危険であるということです。

スタンフォードA型とは?

大動脈解離は大動脈が裂ける場所によって2つに分類されます。上行大動脈(心臓を出てすぐの大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードA型(図2a)、上行大動脈は裂けず、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードB型です(図2b)。

☆私が発症したのはA型

 

★A型は病気が発症して48時間以内に破裂を起こしやすく、緊急手術が必要です(破れやすい上行大動脈を人工血管に取り換えます=かなりの大手術です)。

大動脈の手術後には脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、脊髄麻痺、腎不全といった様々な合併症を起こす可能性

大動脈の手術を受けられた方へ(術後の注意点)
大動脈の手術後には脳梗塞心筋梗塞不整脈、脊髄麻痺、腎不全といった様々な合併症を起こす可能性があります。合併症が起こったときには、その治療が優先されます。
一方、多くの患者さんは、合併症なく手術を乗り切れるので、できるだけ早くに元の生活に戻るようにリハビリテーションを行うことが重要です。自宅に退院しても、医療施設に転院しても、体を動かし、身の回りのことは自分でするように心がけることが大切です。
手術の創の治りや痛みには個人差があります。創部が化膿すると赤く腫れる、熱がある、痛む、汁が出てくるといった症状があります。すぐに医師に相談してください。
痛みは時間とともに和らぎ、半年~1年ほどでほぼなくなります。気候の変わり目や気温の変化によって痛むことがありますが、ほとんどの場合心配ありません。
胸骨を切断して手術をした場合は、胸骨ワイヤーで肯定しています。半年ほどで胸骨はくっつきますが、それまでに強い負担をかけると、骨がずれたり、ワイヤーが切れたりすることがあります。術後半年くらいは前胸部を強くねじるような運動(ゴルフなど)は避けて下さい。また、3カ月程度は自動車の運転も避けた方が良いでしょう。
人工血管を体内に入れる手術がほとんどですが、人工血管感染はごくまれにしか起こらないものの注意が必要です。高い熱(38度以上)が続く場合には要注意ですので、「風邪をこじらせた」などと自分で判断せずに医師に相談してください。人工血管感染の原因の主なものとして歯槽膿漏、抜歯、生肉などの汚染された食物摂取による腸炎などが挙げられます。歯科治療を受ける時には歯科医師に大動脈の手術を受けていることを伝えてください。
人工血管が体内に入っている他、他の大動脈の変化を観察する必要もあるので、定期的に専門医を受診してください。

11. 最後に
動脈瘤はいったん破裂すると即座に命に係わる状態になります。急性大動脈解離も含めた緊急事態に陥った方が、国立循環器病研究センターにたどり着いた時には、全力で治療することができますが、救命のための緊急手術が間に合わないことや、病院にたどり着くことができないこと(院外心肺停止)もあります。
急性大動脈解離の発症を予測することはできませんが、破裂の可能性がある大きさの大動脈瘤が見つかれば、破裂する前に治療を受けるのが最も大切なことです。
緊急手術で行われることは、予定して行われる手術と同じ術式です。十分に検査して落ち着いた状態で受けていただく場合の成功率が高くなるのは当然です。
症状がない時に「手術を受ける」と決断するのは、大変困難で勇気がいることですが、手遅れにならないうちに専門医の説明をよく聞いて、それぞれの患者さんに最も適した治療を受けられるようお勧めします。